Vol.1 ユーザサポートにもの思う(2004.12.31)

 

 筆者はユーザー系企業で情報システム部に勤務しています。

 配属前は、財務系の部署に4年半いました。いわゆる「全体が見える」ポジションを経ただけに、ユーザとの面識が広かったことから自然にユーザサポート(パソコン)が中心となりました。
他のメンバーは、経歴社員が主で、スペシャリスト傾向にあったためか、ユーザ周りの雑多な部分まで手が回らないという状況でした。猫の手も借りたい、とういう状態でした。私が猫以上の役割を果たせたかどうかは定かではありませんが、転配はある意味、需要にうまく適合していたようでした。

 そのような私が、長年の間ユーザサポートを通して思うところを、私の独断でコメントさせていただきます。いささか偏向があることをお許し下さい。
 
 ユーザサポート業務は、守備範囲が広く、またテクニカル以外の要素のほうが重要な場合が多々あります。(ニーズの読み取り、個人のスキルなど) また、標準化できにくい領域と言えそうです。ユーザサポートという用語の定義自体も広すぎるのですね、いっそ「何の」ユーザサポートか、により個々の名称を命名し、領域を区切ってさいまえばどんなに楽か、、。

 但し、その為には、システム運用について、適切かつ網羅的なルールを設けねばなりません。
また、情報システム員のイメージする「ユーザサポート」についても、個々の解釈、定義がばらばらです。ある程度包括した領域の設定を築き、第三者(特にえらい人)への理解を仰がねばなりません。

ところで、ユーザサポートは、じわじわと負荷を増し、見えないコストを膨らませているようです。近年富に顕著に思えます。そこで少し長くなってしまいますが、ここで問題提起です。

-ユーザサポート業務の改善はパソコン運用の問題ではなく組織運営の問題として考えよ。
-ユーザサポートを切り離すのではなく、システム運用管理の延長線上の業務として捉えよ。

 
 トラブルの多くが人的な面に依存します。周知の度合い、理解状態、モラル、それらは
恒常性の高いものです。
 一方、OSのセキュリティや、プリンタの仕様などは、一年もすれば様変わりします。
それらを情報システムで一元管理するには、無理があります。もしやろうとすれば、手段としては「シンクライアント」が考えられるでしょう。しかし、それはユーザの「自由度」を多く犠牲にしなければなりません。偉い人も含めてです。

 ただ、そこまでしなくとも、管理上の便宜を図るため、様々な制限事項を設けます。それが時に業務遅延につながる局面が存在し(出張者の PCをLANに勝手に接続しようとしたらできずに文句を言われる)業務進行の足手まといとなり、「情シスはちっとも役にたたない」と、現場の支持を失うきっかけすらつくります。「ユーザサポート」を手厚くすることがその償いの一つとなっているのかもしれません。

 でも、これではドロのかぶりっぱなしですね。どうすればサポートの負荷を減らせるでしょうか。システム的に解決手段に偏向すると、えらくコストがかさみます。

 それではもっとサポートをアウトソースしたり、Help Deskを導入すれば改善へと導かれるのでしょうか?スタイルとしては立派です。ユーザの質問攻めから逃げることもできますし、「高級な(?)」トレンドウォッチや、システム保守などに時間を費やせます。

 しかし、上記は「尻拭いの役目を外だしする」事にもなりかねず、根本的な解決にはならないと考えます。下記のようなシチュエーションを考えて見ましょう。

 たとえば、100人規模のオフィスのファイルサーバが全体で200GBしかない状態で、「一人100GBくれ」と要求するユーザさんがいたとします。この要求は本人がサーバについて機能的な限界値を確認していないためと思われます。お応えできません。代替手段として、外付けHDDやPCサーバが考えられます。しかし、保安統制上どの企業も禁止する傾向にあるでしょうから、不適切です。

 ここは、要求(ニーズ)の根拠について詳細に尋ね、相手の認識に誤解があれば指摘し、ファイルサーバにゴミファイルがあれば掃除するなど、「要求事項と運用の最適化」をはかるべく歩み寄りをするべきなのです。これをHelp Deskに対応させたら「火消し」役として機能するか、「又聞き」でコンタクトが間接的になり、相互の不信感を助長しかねません。本来は、現場とファイルサーバ責任者が協議の上、案件化すれば早道なのを、「たらいまわし」「グレーゾーン膨張」で、問題が発生したとき、責任のなすりあいになることが予想されます。

 仮に、情シスと現場との調整機能まで外にお任せするとすれば、情シスそのものを閉鎖し、別会社に機能委託することにつながりかねません。また二次的な問題も発生します。保安の問題はその最たるものです。ユーザとのつながりも疎遠になります。法人が異なると、業務範囲も制限されます。工数が増えて、あまり経営者へ価値のない報告書(対応件数など)を作ってもらうために、年間数千万円も払うという事態が予想されます。

 私の案としては、ネットワークややらWEBやらの担当者と同系列で、「システム運用管理の専任者あるいは組織」を設けるべきだと思います。中立的な立場で、保安も含め、全体の最適化を促す役割を与え、ユーザからの苦情や、サポート窓口を一本化するのです。そして、オンサイトのいわゆる「単純な力仕事」(設置、廃棄、キッティングなど)のみアウトソースするのが正しい選択に思います。

 今ユーザサポートに携わっている人はユーザが便利になることだけを視野に入れては
だめです。自分のかかわっている業務の重要性を、第三者へ理解してもらう方法を
戦略的に講じなければなりません。そうしなければ、リストラ予備軍になるのも時間の問題です。

  まずは、いろんな人と意見交換の場を職場以外でつくるなどの人脈をつくりましょう。最近「ユーザサポートの標準化」も進みつつあるのですが、参考程度にとどめ実態を認識し、周囲と協力体制を築くほうがより有意義だと思います。ITILなどは、うってつけの教材だと思います。

 日経コンピュータに「検証 システム部門」という記事が掲載されてありました。
とても目の覚めるような内容で (いささか理想論的な面もあるのですが)、システム部門の方や、エンジニアの方は是非ご一読なさることをお勧めします。

※文中でとりあげたシチュエーションはフィクションですのでご了承願います。

 

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